icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術22巻5号

1994年04月発行

文献概要

増刊号 免疫検査実践マニュアル 各論 Ⅷ.感染症 3.ウイルス感染症の免疫検査

(2)レトロウイルス感染症(HIV,HTLV-Ⅰ)

著者: 吉原なみ子1

所属機関: 1国立予防衛生研究所エイズ研究センター

ページ範囲:P.286 - P.288

文献購入ページに移動
■レトロウイルスの免疫血清学的特徴
 ヒトに感染し,病気を起こさせるレトロウイルスにはHIVおよびHTLV-Ⅰがある.HIVはAIDSの原因ウイルスであり,HTLV-ⅠはATLやHAMの原因ウイルスである.現在のところ感染後,AIDS発症までの潜伏期は平均約10年である.感染後20年でほぼ90%の感染者が発病すると推測されている.残念ながら発病後治癒した報告例は見当たらない.一方,ATLの潜伏期は数十年と長く,生涯発症率は300分の1である.発症後1年以内の死亡率が50%以上,2年以内で全例死亡する.これらのウイルスは感染すると抗体が作られる.この抗体は病気の回復を意味しない.ウイルスと抗体は共存し,一生この状態が続く.したがって,血液中の抗体を確認することによりウイルス分離とほぼ同等の診断価値を持つ.ただし抗体検査はウイルスや遺伝子を直接検出していないことおよび発症までの潜伏期が長いことなどを考慮して,この検査の結果のみから診断することは適切ではない.そのため,診断する場合は病歴や生活歴,身体的所見および検査所見などを総合して判断する必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?