文献詳細
文献概要
増刊号 免疫検査実践マニュアル 各論 XI.細胞免疫
4.T細胞レセプター
著者: 鈴木敏雄1 森泰二郎1
所属機関: 1社会保険埼玉中央病院小児科
ページ範囲:P.362 - P.364
文献購入ページに移動 Tリンパ球が抗原を認識する際に,Tリンパ球表面上において抗原と結合する分子がT細胞レセプター(T cell antigen receptor;TCR)である.TCRを介したシグナルはTリンパ球の活性化を誘導し,ひいては細胞性免疫のみならず免疫機構全体の賦活化の端緒となる.TCRにはα鎖とβ鎖から成るヘテロダイマーとγ鎖とδ鎖から成るヘテロダイマーの2種類があり1),一般抗原は主にαβ型TCRにより認識される.外界に存在するおびただしい数の抗原を特異的に認識するために,TCRはBリンパ球上の免疫グロブリンと同様の多様性を有している.そして,この多様性はTCRを構成するα鎖などの鎖をコードする遺伝子の再構成により主として形成され,この再構成は,各鎖の可変部(V領域)をコードする遺伝子を構成するV,(D),J各領域から遺伝子が選択され接合されることにより完了する.また細胞表面上では,TCRは細胞内シグナル伝達系のCD 3分子と非共有結合性に会合したTCR複合体の形で存在し2),CD3には,γ,δ,ε,ζ,η鎖の5種類のペプチドが同定されている(図1).このようにTCRは複雑な構造を有し,現在広く行われている臨床検査の中にこのTCRの機能に関するものはほとんどなく,むしろTCRの有する多様性などの特性を応用した検査が主に行われている.
掲載誌情報