今月の表紙
子宮頸部上皮内腺癌の細胞診
著者:
都竹正文1
古田則行1
坂本穆彦2
所属機関:
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.614 - P.614
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上皮内腺癌(adenocercinoma in situ;AIS)とは腺癌としての形態学的特徴を持つ細胞が被覆上皮および頸管腺の構築を保ったまま,それらの上皮を置換しながら増殖するが,間質浸潤を欠如するものと定義されている.扁平上皮系の異型病変(異形成や上皮内癌)を伴うことが多い.したがって,純粋な上皮内腺癌をみることはまれである.微小浸潤腺癌(microinvasive adenocarcinoma)や腺異形成(glandular dysplasia)との鑑別が難しく,細胞診での上皮内腺癌と浸潤性腺癌(いわゆる腺癌)との鑑別診断は,扁平上皮系の上皮内癌と浸潤癌の鑑別と比べると,極めて難しい.ただし,上皮内腺癌と浸潤性腺癌を一括して頸部腺癌としてとらえるならば,上皮内腺癌の細胞像は腺癌としての特徴を十分とはいえないが,ある程度は備えているといえる.上皮内腺癌は頸管腺内に発生するために細胞診標本中に出現することはまれであるが,近年,採取器具の開発により発見される機会が増してきた.特にサイトブラッシを用いた細胞診標本では頸管腺内にブラッシの毛が挿入されるため,病変由来の異型細胞の検出が可能となってきた.
上皮内腺癌は,組織学的に腺癌細胞が既存の頸管腺組織の構造を壊さず上皮の部分を置き換えるようにして増殖する.その進展の先端部分は正常頸管腺細胞と明瞭な境界があり,これをフロント(front)形成と呼ぶ(写真d).