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ニューモシスチス・カリニの分類
著者: 和田美紀1 中村義一1
所属機関: 1東京大学医科学研究所癌体質学研究部
ページ範囲:P.900 - P.900
文献購入ページに移動 ニューモシスチス・カリニ(以下Pcと略)は,日和見病原体であり,エイズ患者をはじめ免疫不全状態の宿主に感染してカリニ肺炎を引き起こす.Pcは,1910年ごろ,原虫(原生動物)であるトリパノゾーマの一形態ではないかとして発見されたが,1912年に新種として記載された.Pcは真核生物であるが,その分類学上の位置に関しては,原虫説と真菌説が提出されて長い間議論が続き未確定のままであった.1980年代中ごろまでのPc分類の証拠は主として生活環と形態学的観察,電子顕微鏡による微細形態の観察に基づいており,種々の観点からPcは原虫にも真菌にも類似点と相違点を持つことが指摘されたが,既知の生物種と同属とは考えられなかった1).原虫説の傍証としては,Pcにはペンタミジンなどの抗原虫薬が有効であることも挙げられた.しかしながら,近年になってPcの分子レベルでの研究が進むにつれて,Pcは真菌に属するとする証拠が多数蓄積されてきた.
分子レベルでの研究によるPc分類の試みは,まず,16S様リボゾームRNAおよび5SリボゾームRNAの塩基配列解析によって行われた.遺伝子の塩基配列を生物種間で比較すると,その類似性を基に進化の系統つまり分類上の位置を推定することができる.これは,遺伝子ごとの塩基置換数(突然変異)が進化における分岐後の時間と比例することに基づいている.
分子レベルでの研究によるPc分類の試みは,まず,16S様リボゾームRNAおよび5SリボゾームRNAの塩基配列解析によって行われた.遺伝子の塩基配列を生物種間で比較すると,その類似性を基に進化の系統つまり分類上の位置を推定することができる.これは,遺伝子ごとの塩基置換数(突然変異)が進化における分岐後の時間と比例することに基づいている.
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