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文献詳細

雑誌文献

検査と技術23巻12号

1995年11月発行

文献概要

検査データを考える

低コリンエステラーゼ血症

著者: 須藤加代子1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属第三病院臨床検査医学教室

ページ範囲:P.993 - P.997

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はじめに
 低コリンエステラーゼ(ChE)血症を示す疾患,病態としては,有機リン中毒がまず浮かぶ今日このごろである.あの忌まわしいサリン事件で一躍,低ChE血症が脚光を浴びてしまった.表1に低ChE血症をきたす原因をまとめた.日常の臨床検査において最も多く観察される低ChE血症は,肝臓での蛋白合成低下によるものである.アルブミンなどと同様に,このChEが肝臓で合成されて,酵素蛋白であるためその活性を利用して微量の変化を測定できるので,本邦では血清ChE活性値は肝機能検査として位置づけられており,健康診断,人間ドックなどで測定されている.
 欧米では血清ChE活性測定は術前検査として位置づけられている.サクシン,スキサメトニウムなどの筋弛緩剤を代謝するのがこのChEであるため,低ChE血症では,これら筋弛緩剤投与後に遷延性の無呼吸をきたす危険性があるからである.特に遺伝的なChE変異例では,遷延性の無呼吸に陥る危険性が高いため,術前検査が必要とされている.本稿では,低ChE血症の実例を示し,説明をすることとする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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