今月の表紙
子宮頸部の悪性腺腫
著者:
都竹正文1
荒井祐司1
坂本穆彦2
所属機関:
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.1046 - P.1046
文献購入ページに移動
子宮頸部発生の腺癌の中に細胞異型が軽度で組織学的悪性基準を十分に満たしているとはいいがたい極めて高分化な腺癌がある.これは悪性腺腫(adenoma malignum)と呼ばれている.腺腫とは名ばかりで,浸潤性腺癌である.悪性腺腫は日常の細胞診業務の中で見落とされやすい(false negative)癌の1つである.したがって,この悪性腫瘍の臨床病理学的な事項を十分理解したうえで診断することが大切である.子宮頸癌取扱い規約の中で「悪性腺腫adenoma malignumとは細胞異型が軽く,形態的には正常からの逸脱の少ない極めて高分化の腺癌とみなされる(minimal deviation adenocarcinoma).その診断には,時に異常核分裂像を認めること,しばしば不規則な外方突出angular outpouchingを示すこと,さらに既存頸管腺領域の深さを明らかにこえた浸潤のあることが根拠となる.」とされている(図a).
子宮頸部発生の腺癌の組織分類は,a)内頸部型腺癌adenocarcinoma endocervical type, b)類内膜腺癌endometrioid adenocarcinoma, c)明細胞腺癌clear celladenocarcinoma(類中腎腺癌mesonephroid adenocarcinoma),d)腺様嚢胞癌adenoid cystic carcinomaに分けられている.