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文献詳細

雑誌文献

検査と技術23巻5号

1995年04月発行

文献概要

話題

MRS(MRスペクトロスコピー)

著者: 可知謙治1

所属機関: 1山梨厚生病院放射線科

ページ範囲:P.166 - P.166

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 MRSは体内の化学物質の量を非侵襲的に測定する手法である.1970年代初頭まではMRSは有機化合物の構造を明らかにするのに用いられており,化学者にとって非常に強力な物質分析の手法であった.MRIとMRSの原理は基本的に共通だが,両者の間には技術的な違いが多く存在する.MRIが人体の構造を画像化するのに対し,MRSは組織中の代謝物質の量を測定することが両者の大きな相違点である.
 MR信号の周波数は磁気回転比と原子核の置かれた磁場強度によって決定される.磁場の強度は外界の静磁場に大きく依存しているが,そればかりでなく近傍の原子が有する電子によっても影響を受ける.このような電子間の相互作用が磁場を変化させ,化学シフトを起こさせる.同一の原子であっても化学的に異なれば,共鳴周波数も若干異なり,したがって,異なったMRピークを作る.化学シフトは静磁場の強度に比例して大きくなるため,周波数の差を基準物質の周波数で割った値を用いるのが慣例となっている.水素原子核ではテトラメチルシラン〔TMS:Si(CH3)4〕のメチル基(CH3)),リンでは無機リンが基準物質として選ばれている.水と脂肪のエチル基の周波数の差を基準物質であるTMSの周波数で割った値は,3.45×10-6となる.したがって,これを100万分の1の単位ppmで表すと,水に対する脂肪のエチル基の化学シフトは3.45ppmということになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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