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文献詳細

雑誌文献

検査と技術23巻7号

1995年06月発行

文献概要

検査ファイル

遺伝子治療用ベクター

著者: 池田浩司1 吉田純1

所属機関: 1名古屋大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.516 - P.517

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 近年,先天性遺伝性疾患および癌といったこれまで極めて治療困難であった病気に対して,米国を筆頭に遺伝子治療の試みがなされてきている.この方法では,いかに効率よく安全に目的の遺伝子を標的細胞に組み込むかがその効果を左右するといっていい(図参照).そして,その目的の遺伝子を運ぶ役割を担っているのがベクターであり,これまで幾つか開発されてきている.そのベクターの種類および特徴については,表に掲げたとおりである.
 このうち,レトロウイルスベクターとは,成人T細胞性白血病ウイルスに代表されるレトロウイルスを改良したものであり,分裂細胞に感染すると,それ自身の持つ逆転写酵素によって自身の遺伝子を細胞の染色体中に組み込むことができるため,持続的な遺伝子発現が可能である.また,安全性においても今のところ,他のウイルスベクターと比較して勝っており,現在遺伝子治療用ベクターの中では主流を占めている.しかしその欠点として,非増殖細胞への遺伝子導入が不可能なことや,遺伝子の発現効率が低いことなどが挙げられ,その欠点を補うため,他のウイルスベクターの開発が進められている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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