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文献詳細

雑誌文献

検査と技術24巻4号

1996年04月発行

文献概要

生体のメカニズム 神経と神経調節機構・4

神経移植

著者: 越永守道1 片山容一1

所属機関: 1日本大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.361 - P.365

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はじめに
 脳,脊髄に損傷が加わり,いったん変性が起こると再生,修復は不可能であると古くより考えられてきた.近年になって神経活動の基本となるシナプス結合が,変性によって失われた部位に,本来シナプス結合を持たなかった別の神経細胞が神経線維を伸ばし,新たなシナプス結合を形成することが示された.しかし,このように損傷された神経回路が他の神経細胞により修復されうる現象のみでは損傷前の機能を補うことができないことも,日常の臨床ではよく経験することである.
 そこで古くから脳,脊髄損傷を神経組織の移植により補うことができて,しかもその機能を回復することが可能となればと期待されてきたが,神経系の高度に複雑な構造よりみて,神経移植は意味のある結果を得ることはできないと考えられてきた.ここ20年余りに神経移植に関する実験的研究が飛躍的に進歩し,幼弱な胎児の脳,脊髄組織であれば宿主内で生存しうるのみではなく,障害された神経回路を修復することが可能であることが示されてきた.これとともに失われた特定の神経伝達物質や神経栄養因子を補うために,これらを産生する細胞を移植し,機能改善を図る試みもなされてきている.現時点では,さまざまな制約により臨床応用には広く至っていない領域ではあるが,神経移植の研究は多くの可能性を秘めている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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