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わが国で開発されたA型肝炎ワクチン
著者:
戸塚敦子1
森次保雄2
所属機関:
1国立予防衛生研究所ウイルス製剤部
2国立予防衛生研究所
ページ範囲:P.376 - P.378
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A型肝炎は経口感染性のウイルス肝炎である.潜伏期間は2〜4週であり,発熱と倦怠感を初発症状として発症し,1〜2か月の経過の後に回復する.回復後に血清トランスアミナーゼ値が軽度に再上昇する例があるが,短期間で正常化する.A型肝炎は慢性化しない.まれに腎障害を合併することがあり,ごくまれに劇症化する.感染の約1週後からA型肝炎ウイルス(HAV)が大便中に排泄される.ウイルス排泄は3〜5週間継続し,血液中にも微量出現する.トランスアミナーゼの上昇時にIgMクラスの抗HAV抗体が出現し,約3か月間持続する.IgM抗体に少し遅れてIgG抗体とIgA抗体が出現する.IgA抗体は1〜2年後に消失するがIgG抗体は長期間持続する.A型肝炎の確定診断はIgM抗体の検出による.
A型肝炎は生活環境に影響されやすい疾患である.衛生環境の悪い地域は発生率が高い.上下水道などの整備により急速に減少し,周期的流行が発生するようになる.衛生状態がさらに改善されると流行がやみ,散発的発生になる.輸血後のA型肝炎は極めてまれであるが,最近,ヨーロッパにおいて第8因子製剤による感染事故が発生した.