マスターしよう検査技術
電顕用標本薄切法
著者:
引野利明1
小山徹也1
福田利夫1
中島孝1
所属機関:
1群馬大学医学部第二病理学教室
ページ範囲:P.517 - P.522
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透過型電子顕微鏡試料の作製過程は,原理的には光学顕微鏡試料の作製過程とさほど変わりはないが,試料に電子線を透過させて観察するために極めて薄い切片の作製が要求される.通常は60〜90mμくらいの厚さの切片がガラスナイフやダイヤモンドナイフなどで切削され観察に用いられる.従来は主としてガラスナイフによって薄切が行われていたが,そこには熟練やコツといったものが不可欠であった.最近ではより優れた超ミクロトームが登場し,さらにダイヤモンドナイフの一般的な使用も増えたこともあって,初心者でも容易に薄切が行えるようになった.ただ,その目的が組織,細胞構築の繊細な観察であるために,試料の採取から固定,包埋,重合までの各操作が後の薄切に影響を与え,これによって超微形態にも変化をもたらすこともあるため,これら薄切前の各操作も慎重に行う必要がある.ここでは良好に固定,包埋された後の薄切法について解説する.