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増刊号 輸血検査実践マニュアル 総論 輸血の構成成分とその機能 血球系
造血幹細胞(末梢血幹細胞)
著者: 前川平1 中畑龍俊12
所属機関: 1東京大学医科学研究所附属病院輸血部 2東京大学医科学研究所癌病態学研究部
ページ範囲:P.33 - P.38
文献購入ページに移動健康な成人の生体では,毎日数千億個の赤血球や白血球が産生されることにより,恒常的造血が保たれている.骨髄で活発な細胞分裂により新しい血球が産生され,一定の寿命を持った細胞の喪失を補っている.すべての血球が分化成熟を伴う分裂をすれば,造血は枯渇してしまう.したがって,分化成熟を伴わない分裂をする細胞の存在が必須である.造血幹細胞とはこのような能力を持った細胞であり,赤血球,白血球,リンパ球,巨核球などすべての成熟血球をつくりだす能力と,自分と同じ細胞を生む自己複製能を兼ね備えた細胞であると定義される1).造血幹細胞は骨髄中のみならず,末梢血中にも流れていることは古くから知られていたが,最近では臍帯血中にも含まれていることが明らかにされている.現在,これらの造血幹細胞を種々の疾患の治療に応用しようとする骨髄移植(bone marrow transplantation;BMT),末梢血幹細胞移植(peripheral blood stem cell transplantation;PBSCT),さらには臍帯血移植などの造血幹細胞移植療法が活発に展開されてきている.
本稿では造血幹細胞の測定法,サイトカインのヒト造血幹細胞の分化増殖の及ぼす影響を述べ,末梢血幹細胞(PBSC)の特徴について,その臨床応用という観点からPBSCTに触れながら述べてみたい.
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