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文献詳細

雑誌文献

検査と技術26巻13号

1998年12月発行

文献概要

検査データを考える

急速に進行する貧血

著者: 田口博國1

所属機関: 1高知医科大学第3内科

ページ範囲:P.1171 - P.1174

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はじめに
 急速に貧血が進行するときに,まず気をつけなければならないのは検査データの技術上の問題の除外であろう.採血に時間がかかったり,抗凝固剤との混和が不十分であったりすると凝血塊ができる.この場合は検体を肉眼的に確認し,採血のやり直しをする必要がある.また,泡立てて採血したような場合,試験管内で溶血し,赤血球数が低く出る.案外多いのが検体の間違いであろう.ラベルの貼り間違え,検体ラックへの並べ順の間違いなどで前後の貧血患者のものと間違って報告された場合,貧血が急速に進行したと誤って判定される.
 以上のような技術上の問題が除外され,真に貧血が急速に進行したときは,その原因として出血か,破壊の亢進(溶血)か,産生の低下のいずれかである1).この場合,図のような流れで検査を進め診断に至る.産生の低下の場合は鉄,ビタミンB12,葉酸などの造血因子の欠乏による貧血や,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群では慢性の経過をとり,急速に進行することはない.白血病や癌の骨髄転移やDIC(disseminatedintravascular coagulation,播種性血管内凝固異常)の場合,出血を伴えば,貧血の進行は急速であることが多い.なお,白血病や骨髄腫,悪性リンパ腫が寛解になって外来でコントロールしているとき,貧血が急速に進行した場合は再発の徴候と考える必要がある.本稿では,このうち出血と溶血について症例を提示して概説する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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