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血栓症と遺伝子
著者: 村田満1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部内科/中央臨床検査部
ページ範囲:P.185 - P.187
文献購入ページに移動遺伝子の病気といえば,つい10年前までは単一遺伝子による遺伝病,例えば血友病のようにここの遺伝子に異常があるから凝固因子が欠乏するのだと明確に示されるものばかり考えられていた.そして,心筋梗塞のように多因子遺伝による疾患の遺伝子解析は複雑で,とうてい遺伝子診断などできるものではないと考えられていた.遺伝的因子のほかに後天的因子が絡み合って,まず基盤となる動脈硬化病変が形成され,そこに血小板や血液凝固因子が主役をなす血栓が生じ,血栓症が発症するのであるから,責任となる遺伝子の同定が容易であるはずはない.そして特別な脂質代謝異常を伴う冠状動脈硬化症を除き,その遺伝形式は現在なお不明である.しかし,動脈硬化,血栓形成機序の分子学的知見が深まり,これらの促進因子,抑制因子が次々とクローニングされるに伴い,これら疾患の遺伝的要素に対する理解に変化がみられてきた.
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