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薬剤費削減の新たな試み—細菌検査に関連して
著者: 田島裕1
所属機関: 1佐賀医科大学附属病院検査部
ページ範囲:P.573 - P.575
文献購入ページに移動抗菌薬を世界一多量に消費している国は,ほかならぬ日本であり,人口当たりで比較すると米国の約4倍に達するという(世界的な標準使用量に対しては10倍程度).この理由については,多くの評論家からいくつか指摘されているが,最大の原因は“出来高払い制”という日本独特の保険支払い制度にあるとされており,“新薬ほど薬価が高い”という薬価制度のありかたも,薬剤費の膨張に拍車をかけている.すなわち,医療機関は“高価な新薬を多用すればするほど,多くの利潤を得ることができる”という,“利益誘導”をかけられているのである.
加えて,近年は分子生物学の進歩が著しく,医学部のカリキュラムはその方面の知識の伝授に多くの時間を割かなければならなくなり,古典的な微生物学や薬理学の教育は,(実際の臨床活動には必須な知識であるのにもかかわらず)ますます貧弱なものになってきているのが現状である.卒後の研修でも,十分に教育的な人材に遭遇できるとは限らず,この方面の知識は,多くの医師にとって“自己学習”で習得せざるを得ないものとなった.こうした“基本的な知識の欠如”・“教育の衰退”も,今後の医療問題を考えるうえでは大きな問題であろう.言い換えると(このことは,感染症の分野に限ったことではないが),“専門外の人間に,どうやって必要最低限の知識を効率よく伝授するか”ということが,さしあたっての課題ではないかと考える.
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