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病理検査こぼれ話
病理検体の個体判定
著者: 横崎宏1
所属機関: 1広島大学医学部第1病理
ページ範囲:P.316 - P.316
文献購入ページに移動 マイクロサテライトは,ヒトハプロイドゲノム内に15万〜30万個存在するといわれるアデニン・シトシンやシトシン・アデニン・グアニンなどの単純な繰り返し塩基配列である.一般に蛋白質をコードしていないイントロンと呼ばれる遺伝子領域に分布するこれらの繰り返し数が個人によって,さらに,個人のゲノム内でも父方と母方由来のアレル間で差があること(これを遺伝子多型という)が知られている.このような遺伝子多型マーカーは,特に法医学領域で個人識別判定に応用され,先般のO. J. Simpson裁判ではそのデータの一部がCNNを通じて全世界に報道されたことにより一躍世に知られるようになった.
病理検査において,検体の取り違えはあってはならないミスである.しかしながら,近年の急激な検体量の増加に伴い,まれにではあるが発生することを筆者も経験している.臨床からの依頼箋に記された臓器と明らかに異なれば対処の方策もあるが,同一臓器の異なった病変が検体間で取り違えられた場合にはお手上げである.幸いにも,一方の患者に以前生検の既往があり,前回ならびに取り違えが疑われた今回の検体ブロックからのパラフィン切片よりDNAを抽出し,PCR法により数か所のマイクロサテライト領域を増幅してアレル解析を行うことで,個々の検体の個人識別を行い,検体の取り違えを証明し,難を逃れたことがある.
病理検査において,検体の取り違えはあってはならないミスである.しかしながら,近年の急激な検体量の増加に伴い,まれにではあるが発生することを筆者も経験している.臨床からの依頼箋に記された臓器と明らかに異なれば対処の方策もあるが,同一臓器の異なった病変が検体間で取り違えられた場合にはお手上げである.幸いにも,一方の患者に以前生検の既往があり,前回ならびに取り違えが疑われた今回の検体ブロックからのパラフィン切片よりDNAを抽出し,PCR法により数か所のマイクロサテライト領域を増幅してアレル解析を行うことで,個々の検体の個人識別を行い,検体の取り違えを証明し,難を逃れたことがある.
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