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増刊号 病理組織・細胞診実践マニュアル 第VIII章 新しい技術
1.PCR(in situ PCRを含む)
著者: 川口竜二1 佐々木宏2 引地一昌3
所属機関: 1(株)エスアールエル遺伝子・染色体解析センター研究開発課 2(株)エスアールエル遺伝子・染色体解析センター遺伝子解析課 3(株)エスアールエル遺伝子・染色体解析センター
ページ範囲:P.340 - P.344
文献購入ページに移動ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)はDNA鎖断片をin vitroで増幅できる技術であり,1985年にこの方法を発表した米国シータス社(当時)のKary B.Mullisは,その功績により1993年のノーベル化学賞に輝いた.PCR技術は感染症をはじめ,癌や遺伝病の診断などに広く利用されており,その範囲は医学分野にとどまらず,広く工学,農学,水産学,考古学などの分野で応用されている.また,この技術を用いた検査診断薬キットもいくつか市販されている.PCRは被検材料から抽出したDNAを鋳型として2種類のオリゴヌクレオチドプライマー,耐熱性DNA合成酵素(Taq DNAポリメラーゼ)およびデオキシリボヌクレオチド混液(dATP,dCTP,dGTP,dTTPからなり,dNTPと略記される)を含む反応液と一緒に温度サイクル装置(サーマルサイクラー)にセットすれば,3〜4時間で目的DNAの106個以上のコピー産物(PCRプロダクト)を得ることができる(図1).したがってPCRの最大の目的は,従来技術では検出感度以下であった微生物やゲノム変異体(異常遺伝子)を同定・定量化するところにある.例えば,体内へ進入した微小ウイルスを抗体出現以前に同定したり定量できる.またヒトの遺伝子変異やゲノム上の欠失,増幅を調べることで,疾患を特定し,治療評価の指標とすることもできる.
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