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結核の集団発生
著者: 和田雅子1 吉森浩三2
所属機関: 1結核予防会結核研究所疫学部 2複十字病院呼吸器内科
ページ範囲:P.488 - P.490
文献購入ページに移動日本では結核罹患率は欧米諸国と比較すると約4倍と高く,結核患者の大多数はかつて結核高蔓延時代に青春時代を過ごした60歳以上の高齢者であり,若年齢層ではほとんどが未感染である1).国民も結核はすでに過去の病気と思っており,長期間咳や痰が続いても医療機関を受診しないことや,結核患者が減少するに従い医師が結核を診察する機会が少なくなり,診断の遅れや誤診などが集団感染を起こす原因になっている.大阪の産院での感染事件では直接患者と接していない新生児が感染し,粟粒結核を発病した.この事件は菌の毒性と非感染者の感受性についての問題を新たに提起した事件である.また,某老人ホームでの集団感染事件は,従来すでに感染している者は新たに感染しないとされているドグマを否定する出来事である.エイズの患者において再感染が高率に起こっていることが報告されているが,高齢者でも細胞性免疫の低下が起こり,再感染が起こると考えなければならないだろう.
このように,結核感染をめぐる状況はかつて想像もできない変化が起こっていることを受け止め,感染防止対策を立て直さなければならない.
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