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文献詳細

雑誌文献

検査と技術28巻1号

2000年01月発行

文献概要

トピックス

脳死移植はどう行われたか—平成11年2月28日の心臓移植を終えて

著者: 白倉良太1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科附属バイオメディカル教育研究センター臓器移植学

ページ範囲:P.87 - P.90

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はじめに
 世界最初の心臓移植に成功したのは1967年の暮れで,筆者が卒業試験で苦しんでいるときである.この間,世界では260近い施設で総計約50,000例の心臓移植が行われてきた.わが国でも1968年8月に1例の心臓移植(世界で30例目,81日の生存は9番目の成績)が行われたが,不幸なことに,その後日本では腎臓以外の臓器移植ができなくなった.その間,紆余曲折があったが,1997年10月に,いわゆる臓器移植法が施行された(表参照).そして,その1年4か月後の昨年2月28日に,ようやく脳死者からの臓器移植が実現した.その後,引き続いて5月12日,6月14日,6月24日に臓器提供があり,多くの患者さんに移植が実施された.狂乱の取材攻勢の中で幕が開けたが,若干のつまずきはあったものの,その後混乱の程度は着実に沈静化しつつあり,4回とも極めてスムーズに実施された.日本で心移植,肝移植などが受けられる日を一日千秋の思いで待ち望んでいた患者さんにとって大変な朗報であったが,法律の内容を考えると,これですべてが叶い,移植医療がすぐに定着・普及するとは思えないのも事実である.
 関係各方面の方々の努力によってようやく移植が始まったが,それは何よりも臓器を提供してくだっさった方々とそのご家族の高邁なご意思と人類愛の賜であり,尊敬と感謝の念を禁じ得ない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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