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解剖室の細菌汚染と対策
著者: 市澤末廣1 甲田賢治2 椙村春彦3
所属機関: 1藤枝市立総合病院診療技術部臨床検査室 2藤枝市立総合病院診療部病理診断科 3浜松医科大学病理学第1教室
ページ範囲:P.93 - P.97
文献購入ページに移動最近の院内感染には,抗生物質の乱用などで急増したMRSA感染症や,B型肝炎,エイズ,結核といった微生物を顔面に浴びたり,針を刺す,あるいは呼吸器系より吸入したりするといった例が挙げられる.これらの感染症に対する防止対策は,今日の重要な医療課題の1つである.実際に手術室や病室などの医療現場では,表面付着菌数の増減を指標にして病原菌の汚染を推定し,院内感染を起こさないよう感染防止対策に取り組んでいる.ところが,病理解剖室となると人体が持ちうるあらゆる病原体と接触する場であるにもかかわらず,細菌汚染についての実態調査・研究は少数にとどまっており,感染防止対策の基礎データすらないのが現状である.しかし,解剖室における職業感染防止の面から考えれば,剖検従事者みずからがハード面とソフト面から,バイオハザード(biohazard=生物災害)対策に取り組む必要があるのは当然である.
本稿では,実務者の立場から10施設の解剖室内の細菌汚染の実態と,清掃と消毒方法,そして材質と汚染度の調査を行い,その結果1)をもとに解剖室バイオハザード対策の基本戦略と,それを防ぐ方策,すなわちバイオセーフティ(biosafety=生物学的安全性)を考慮した施設,設備,技術などのポイントを,新たな検証結果と私見をまじえて概説したい.
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