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絵で見る免疫学 基礎編・9
自己拘束性と自己寛容性—T細胞前駆細胞は胸腺で分化・成熟する
著者: 高木淳1 玉井一2 隈寛二2
所属機関: 1ダイナボット(株)器機診断薬事業部 2隈病院
ページ範囲:P.1250 - P.1251
文献購入ページに移動T細胞とB細胞は,ともに骨髄幹細胞由来であるが,B細胞は骨髄で膜型IgMを発現した未熟B細胞にまで成熟し,未梢リンパ節に移行する.しかし,T細胞は早期にT細胞前駆細胞のかたちで胸腺に移行して,ここで分化・成熟する.胸腺に移行したT細胞前駆細胞は小型で表面抗原を欠き,まだ免疫細胞としての特異性はなく発生過程であるため,胸腺細胞と呼ばれる.胸腺に入り胸腺皮質上皮細胞と接触すると,TCRの再構成が行われ,固有の抗原に対して特異性を持ったTCRをT細胞表面に発現する.胸腺におけるTCRの再構成は,骨髄におけるB細胞の成熟過程でのイムノグロブリンの再構成と多くの点で同じように行われる.
B細胞は膜型Igが直接外来抗原を認識するが,T細胞の膜表面のTCRは,感染細胞やB細胞のMHC(ヒトではHLA)に結合したペプチド断片のみを認識する.このMHCとは自己の細胞である印のようなものであり,自己であるとの表現である.したがって,T細胞は自己の細胞であることを確認して,自己MHCとのみ親和性を持っ.自己MHCと親和性のないT細胞はここで死滅する.これを自己MHC拘束性と呼び,この選択を正の選択という.また,T細胞はTCRとともにCD3,CD4やCD8などの表面抗原を発現する.CD4,CD8を発現していないT細胞をダブルネガティブ胸腺細胞という.
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