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絵で見る免疫学 基礎編・12 細胞の生と死・3
死のプログラム(その1)—正常のアポトーシス機能
著者: 高木淳1 玉井一2 隈寛二2
所属機関: 1ダイナボット(株)器機診断薬事業部 2隈病院
ページ範囲:P.1526 - P.1527
文献購入ページに移動人類最大の願いは,平和な世界であるが,いまだにヒトは同じヒトどうしで争い,殺しあう.そして,争いは必ずしも弱者が守られ,正義が勝つとは限らない.われわれの身体は60兆個の細胞が組織や臓器を作り,1つの世界をなしている.この世界の最小単位である細胞の世界で,同じような争いがないだろうか.
われわれの身体では,毎分数百万の細胞が作られ,ほぼ同数の役目を終えた細胞が消えていく.固体の発生の過程やこれを維持する場合において,不要な細胞,異常な細胞や間違った場所に作られた細胞は除去され,細胞数が制御される.そして,機能していない細胞や有害な細胞は排除されて個体は形成される.例えば,指など身体の各部分の形成,腹腔の形成,またオタマジャクシがカエルになる場合や,骨髄で産生される未成熟なT細胞前駆細胞が胸腺で分化する際,自己拘束性(正の選択)と自己寛容性(負の選択)を獲得するために95%以上が死んでいく場合である(本誌28巻10号:pp 1050-1051).また日常においても,好中球は,いつ侵入してくるかもしれない病原体に備えて常時骨髄で大量に産生されるが,その多くは,一度も機能することなく2〜3日で死んでいく.このように,1個の生命体を創り,これを維持するために,不要な細胞や危険な細胞は死ななければならない.
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