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文献詳細

雑誌文献

検査と技術28巻3号

2000年03月発行

文献概要

日常染色法ガイダンス 多糖類の日常染色法—複合糖質(ムコ物質)の染色法

メタクロマジーを利用する方法(トルイジン青染色)

著者: 田村邦夫1

所属機関: 1社会保険中京病院検査部

ページ範囲:P.267 - P.271

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目的
 酸性粘液多糖類はアニリン系塩基性色素と反応してメタクロマジー(異調染色)を起こす.例えば,トルイジン青水溶液で多くの組織成分は青色に染まるが,粘液や軟骨などは色素が本来有していない赤色調が出現して赤紫色に染まる.メタクロマジー自体は古くから知られていて,Ehrlichによれば「ある色素で組織学的要素を染める場合,要素が色素溶液とは異なった色調で染色される」と定義されている.溶液中でもメタクロマジーはアニリン系塩基性色素と酸性基を有する高分子化合物の間で起こり,最大吸収波長が長波長側にずれることが確認されている.病理組織学においてはメタクロマジーを起こす物質はコンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸,ヘパリンなどの酸性粘液多糖類や核酸,アミロイドなどがある.
 メタクロマジーの反応機構は-SO3H,-COOHなどの酸性基を有する酸性粘液多糖類や-PO4を有する核酸とアニリン系塩基性色素がイオン結合する化学反応と理解されている.酸性色素やラック性色素(色素自体に染色性はないが,塩類を結合させることにより染色性を獲得する色素)でもメタクロマジーは観察されるが,これらの色素についての発現機構は不明であり,塩基性色素とは異なった発現機構によるものと考えられている.また,その組織化学的な意義についてもほとんどわかっていない.このため,特別な断りがない限りメタクロマジーといえばアニリン系塩基性色素によるものを指している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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