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増刊号 血液検査実践マニュアル Part 1 総論
2.血液検査の基準値
著者: 巽典之1 日野雅之2 津田泉2 近藤弘3
所属機関: 1大阪市立大学医学部臨床検査医学講座/血液内科 2大阪市立大学医学部臨床検査医学講座 3大阪府立看護大学医療技術短期大学部
ページ範囲:P.663 - P.668
文献購入ページに移動元来“正常値”とは健康な個人または母集団から求められた健康評価の基準となるべき値あるいはその範囲を指すものである.しかし“正常値”とは何か? そして,そのもとになる“正常”とは何か? との疑問が生ずる.WHOの健康の定義は「完全に身体的・精神的・社会的に良好な状態であって,ただ単に病気がないとか虚弱な状態でないというものではない」であるが,満足すべきものでなく,残念ながら統一された定義が存在しないのが現状である.健康の基準は対象として扱った健常人の集団の人種・数・年齢・性・体格・生活環境と生活習慣(食習慣を含む)などによって左右されることから,国により条件が異なってくる.さらに体格・生活環境や生活習慣は,それぞれの国において年々わずかずつ変化するし,測定法と測定精度の変化も考慮しなければならない.これらのことから,正常とは絶対的な基準でなく相対的なものであると考え,健常な状態を維持していると判断される対象群での集団正常値を基準値〔reference value;基準範囲(reference interval)〕と呼ぶ1,2).しかし,その値は絶対的かつ恒久的なものでなく,一定の期間ごとに訂正する必要がある.国際血液学標準化標議会(International Council for Standardization in Haematology;ICSH)の定義1,2)を以下に示す.
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