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文献詳細

雑誌文献

検査と技術29巻1号

2001年01月発行

文献概要

検査じょうほう室 寄生虫:寄生虫は面白い

親父とビール腹(疹)

著者: 赤尾信吉1

所属機関: 1防衛医科大学校寄生虫学教室

ページ範囲:P.58 - P.59

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親父の腹に葡行疹が!
 伝技師が敬愛する憲一郎親父の腹は日頃の生活を物語るように見事なビール腹だ.あるべきはずの臍の凹みもなく,痕跡化した臍なのだ.その臍らしき箇所より一筋の赤い葡行疹が15cmほど下腹に向かって走っていた.親父は驚いて伝技師に「これは何だ」と見せた.よく見ると,葡行疹の先端部は水イボのようになり,小水泡が形成されている.水泡を小針で破ると約0.01〜0.1μlの体液が得られ,この穿刺液を弱拡大(10×10)で鏡検すると尾部が旋回した幼虫(体幅80〜105μm,体長6.5〜8.5mm)が検出されたのだ.
 これはホタルイカに寄生する施尾線虫目幼虫type Xであることが判明した(図1).本虫の生態,生活史は不明で,ヒトにはホタルイカの生食により感染する.主な症状としては腹部の皮膚葡行疹が多く,まれに前眼房寄生例がある.葡行疹は生食1〜3週間後に紅斑性浮腫が起こり皮疹となる.もう1つは腸閉塞で,食後5〜6時間を経て起きる.この症状は腸アニサキス症と誤診するので注意が必要である.幼虫摘出後は無症状となり,紅斑も暫時消失する.ヒトでは成虫にならず,今後の生活史の解明が期待される.ホタルイカ以外にハタハタ,タラ,ホッケなどの内臓からも検出されている.終宿主は鳥,海産哺乳類が考えられる.伝技師によると,血液検査値では好酸球が増加し,臓器侵入の場合も増加する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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