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発癌性のある色素
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ページ範囲:P.671 - P.671
文献購入ページに移動 1864年頃,ドイツでコールタールを蒸留して新型の色素(コールタール色素=アゾ色素)が作られた.1895年にレーン(Rehn)が,フランクフルトのフクシン(赤い色素)の生産工場の従業員に高い確率で膀胱癌患者が発生しているのを報告した.その後,スイスの染料工場からも同じ報告が出,色素の製造に関係があるらしいと考えられた.当時はアニリンを扱っていた工場で発生したため“アニリン癌”と命名された.これが色素と発癌性との関係を示唆する最初のエピソードである.
1971年に労働安全衛生法が発令,施行され,製造中止となったが,それまでの色素工場では,種々の色素の合成法の中間原料にベンチジン,2-ナフチルアミンなどが使用されていた.これが発癌物質として作用することを1938年にHueper WCが証明した.日本では京都の友禅染めの職人がベンチジン系アゾ色素であるダイレクトディープブラックという色素を使い,その液を付けた筆を舐めながら描いていた.この職人の中から膀胱癌患者が出た.この色素が体内に入り,腸内細菌により,アゾ結合が外れてベンチジンが分解産物として発生し体内に取込まれ,尿中に排泄されることが原因ではないかと考えられている.
1971年に労働安全衛生法が発令,施行され,製造中止となったが,それまでの色素工場では,種々の色素の合成法の中間原料にベンチジン,2-ナフチルアミンなどが使用されていた.これが発癌物質として作用することを1938年にHueper WCが証明した.日本では京都の友禅染めの職人がベンチジン系アゾ色素であるダイレクトディープブラックという色素を使い,その液を付けた筆を舐めながら描いていた.この職人の中から膀胱癌患者が出た.この色素が体内に入り,腸内細菌により,アゾ結合が外れてベンチジンが分解産物として発生し体内に取込まれ,尿中に排泄されることが原因ではないかと考えられている.
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