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ジアミノベンチジン,その発癌性の問題
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ページ範囲:P.741 - P.741
文献購入ページに移動 ベンチジンは染料の中間原料として製造され,側鎖に各種の置換基を付けることで多様な色素が合成されていた.日本の染料業界が戦後の復興期であった1954〜1955年の2年間にベンチジンを大量に生産し中国に輸出していた.この時,既に急性・亜急性ベンチジン中毒による膀胱炎が多数の従業員に認められていた.同時期の1954年にケース(CaseRAM)によって疫学的に染料工場で使用されるベンチジンの発癌性が報告されている.それによると膀胱癌の発生率は,一般の人と比較して19倍と高率であった.しかし癌発症までの潜伏期間が1〜45年(平均約20年)と非常に長く,当時はあまり意識されていなかったようである.当時ベンチジンの製造がさかんだった和歌山県内では,約120人の職業性膀胱癌が発生したという悲しい歴史がある.
そのほかホジキン(Hodgkin)病や多血症の治療薬としてクロルナファジンが北欧を中心に使用されたことがある.これはベンチジンのNにCH2CH2Clを付けた構造の物質で,これを投与するとホジキン病は治るが後に二次的膀胱癌が多数発生してしまい,使用禁止となった.
そのほかホジキン(Hodgkin)病や多血症の治療薬としてクロルナファジンが北欧を中心に使用されたことがある.これはベンチジンのNにCH2CH2Clを付けた構造の物質で,これを投与するとホジキン病は治るが後に二次的膀胱癌が多数発生してしまい,使用禁止となった.
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