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文献詳細

雑誌文献

検査と技術29巻8号

2001年07月発行

トピックス

HIVのサブタイプ

著者: 有吉紅也1

所属機関: 1国立感染症研究所エイズ研究センター

ページ範囲:P.1034 - P.1037

文献概要

HIVの多様性
 HIV(human immunodeficiency virus;非免疫不全ウイルス)は,レトロウイルスに属するRNAウイルスである.HIVは,生活環の過程で,RNAゲノムを鋳型としてDNAゲノムを複製する逆転写過程が必須である.逆転写酵素が校正機構を有しないため,逆転写を経るごとに約9.7キロベースのゲノムに少なくとも1つの突然変異が生じる.その結果HIVは,感染者の中で,似通ってはいるが厳密には少しずつ遺伝子配列が異なるHIVゲノムの集団(クワシスピーシーズ)として存在する.またHIVは1つのウイルス粒子の中に2つのRNAゲノムを有し,逆転写過程で双方のRNAゲノムを鋳型として1つの二本鎖DNAゲノムとなる.したがって1つのウイルス粒子に異なったRNAゲノムが挿入された場合,両者のゲノムがモザイク状に入り混ざった組換えHIVウイルスが生まれる.
 このように,逆転写過程の突然変異と組換え現象によりHIVは自身の多様性を増大し,それぞれの宿主環境において,最も生存に適応したウイルスが選ばれ生き残ることが繰り返されている.加えて宿主環境は,免疫的抑圧など個人によって異なるため,HIVが異なる個体に伝播することに新たな多様性が生じる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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