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文献詳細

雑誌文献

検査と技術30巻10号

2002年09月発行

文献概要

コラム

X染色体の不活化

著者: 大島利夫1

所属機関: 1東海大学医学部附属病院臨床検査科

ページ範囲:P.996 - P.996

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 ヒトの染色体は,22対の常染色体と2本の性染色体で合計46個である.男女とも常染色体は同数で遺伝子の量も同量であるが,性染色体は男性がX染色体とY染色体を1個ずつ,女性はX染色体を2個持つ.すなわち,X染色体の遺伝子の量は,女性では男性の2倍量あることになるが遺伝量の違いによる男女の形質発現の差異はない.これは,女性にある2個のX染色体のうち1個は不活性化により遺伝学的にほとんど機能せず,男女におけるX染色体上由来の遺伝子産物は実質的に同量となる機構があるためで,これを遺伝子の量的補償(gene dosage compensation)という.
 この現象は,1960年,Lyon MFにより,マウスのX染色体上にある毛色遺伝子の発現様式の研究がきっかけとなり実験的証明がなされた.今日X染色体の不活化現象(X chromosome inactivation)はLyonizationとも呼ばれている.不活性化しているX染色体は,すべてにわたって不活性化しているのではなく,短腕末端部などは部分的に活性化が維持されている.1940年,BarrとBertramは,雌ネコの神経細胞の休止核に,塩基性色素に濃染する小体を発見した.この小体は性染色質(Xクロマチン),または,発見者の名前にちなんでバール(Barr)小体と呼ばれている.ヒトでも女性の口腔粘膜などの組織細胞で確認できる.染色体の複製は,細胞が分裂していない分裂間期に行われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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