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絵で見る免疫学 基礎編・28
ヒトの免疫機構に対抗するB型肝炎ウイルス
著者: 高木淳1 玉井一2
所属機関: 1ダイナボット(株)器機診断薬事業部 2栄光病院
ページ範囲:P.348 - P.349
文献購入ページに移動B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に感染してB型肝炎が発症するのは,Tリンパ球を主とする細胞性免疫によって肝細胞障害が惹起されるからである.HBVが侵入すると樹状細胞がこれを捉え,異物としてMHCクラスⅠがHBVのペプチド断片を提示する.これをTH2が認識し樹状細胞は高度に活性化する.活性化した樹状細胞上のMHCクラスⅠに提示されたHBVのペプチド断片を認識したナイーブT細胞は活性化してCTL(第28巻第11号参照)へと分化成熟する.CTLはHBV感染肝細胞上のMHCクラスⅠに提示されたHBVペプチド断片を認識し,これを殺す.B型肝炎はCTLがHBV感染肝細胞をHBVごと破壊する機構で説明される.一方,HBVの可溶性抗原,例えばHBV表面抗原を捕らえたナイーブB細胞はTH2の刺激を受け,B細胞を形質細胞へと導き,HBV表面の抗体を産生し,血中のHBVはこの抗体によって中和され排除される.B型肝炎は宿主の細胞性免疫と体液性免疫の機構によって感染後そのほとんどが一過性の肝炎で治癒される(図1).しかし,時には死亡率の高い重症な肝炎になる.同じウイルスにもかかわらずこの病態の違いは,宿主の免疫応答の違いによるものとされていた.
HBVはDNAウイルスと異なり,感染肝細胞内での複製に際して,RNAウイルスのように逆転写過程を介して増殖している.
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