icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻1号

2003年01月発行

ラボクイズ

12月号の解答と解説

著者: 平泻洋一1

所属機関: 1長崎大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.43 - P.43

文献概要

【問題1】 解答:③

解説:抗酸染色によって直径5μm程度でほぼ均一な大きさの赤色で類円形のオーシストが観察され,クリプトスポリジウム症と診断された.クリプトスポリジウム症は通常Cryptosporidium parvumの感染によって生じる激しい水様性下痢と腹痛を来す原虫感染症である.感染症新法では4類感染症に属し全数把握の対象となっている.HIV(human immunodeficiency virus,ヒト免疫不全ウイルス)感染者における日和見感染症としても知られているが,健常人においても集団発生を起こす場合がある.発展途上国への旅行中の感染が多いが,先進諸国においても水道水やプールの汚染による感染が発生しており,国内では1996年に水道水を介した大規模な集団感染が発生し注目された.

 感染経路はオーシストの経口摂取で,汚染された水,生野菜などが原因となる.潜伏期は通常4~5日であるが極めて感染力が強く,オーシスト数個の摂取で発症する.健常人では数日~2週間程度で自然治癒するが,AIDS(acquired immunodeficiency syndrome,後天性免疫不全症候群)患者などの免疫不全患者では下痢が長期間におよび体重減少と衰弱が著しく,胆囊・胆管,膵管,呼吸器などの腸管外感染を伴い,しばしば致命的になる.クリプトスポリジウムのオーシストは乾燥や70°C以上の加熱で死滅するが,浄水場における塩素消毒や病院などで使用される消毒剤には抵抗性である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら