icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻10号

2003年09月発行

文献概要

増刊号 包括医療と臨床検査 第1章 総論―包括医療とは 3.検査部での対応

1)自動分析検査はどうあるべきか

著者: 桑克彦1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系

ページ範囲:P.920 - P.923

文献購入ページに移動
 はじめに

 臨床検査の発展の歴史は,自動化学分析装置の開発と発展に代表される.用手法を自動化し,多数の検体を精密に,迅速に測定することを可能にした.これで主として血清中の生化学成分の定量検査が日常的にどこの検査室でも容易に実施できるようになった.装置の多機能化,検査情報システム(laboratory information system;LIS)や病院情報システム(hospital informatin system;HIS)とのネットワーク化,搬送ラインとの接続などによるトータルシステムとして組み立てられてきている.さらに専用自動分析装置として,尿検査,血液検査,免疫検査などが開発され,検査室はこれらの自動分析装置を必要な分だけを配置し,これらを用いた検査業務がルーチンワークの大部分を占めている.

 自動分析装置の発展は,装置メーカーの技術の努力によるものであるが,併せて検査室による患者情報を用いた精度管理手法の構築,試薬メーカーによる酵素的分析法の開発など,日本での固有の技術をも生み出した.

 これらの自動分析装置を用いた検査は,登録衛生検査所の台頭を余儀なくしたことから,試薬代の二重価格の存在やサービスのしかたなどにおいて,もはや病院検査室では少なくとも経済性においては,太刀打ちできなくなった.医療の効率化や経済性が求められる今日,自動化した病院検査室は,アウトソーシングの格好の的になっている.言い換えればそれだけ機能分化し,測定という過程だけについては,専門職種に取って代われるものになったということでもある.

 技術の発展の歴史においては,いずれも似たプロセスを経る.すなわち信頼性の向上と効率化により達成されたものは,次なる新しい領域を創出しなくはならないということである.臨床検査の生化学成分の定量検査は,まさしく医療分野において初めて達成された技術の発展の成果であり,次なる領域へ歩みだす布石である.

 ここでは自動分析検査のこれから行う新しい検査について,医療での役割分担をターゲットとした内容を中心にまとめた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?