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文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻13号

2003年12月発行

文献概要

検査じょうほう室 病理:病理標本に見られる不思議な現象

酸性フクシン―膠原線維と細胞質を染め分けられる理由

著者: 藤田浩司1 工藤玄恵1

所属機関: 1東京医科大学病理学第二講座

ページ範囲:P.1386 - P.1390

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 はじめに

 組織染色,つまり組織切片への色素の吸着現象は官能基の種類,分子量,溶媒の環境,そして組織の蛋白質構造など複雑な要因が絡み合う.その結果,同じ色素を使用しても,染色法の相違により染色される対象組織が異なる.

 その代表的な1例として酸性フクシンが挙げられる.それはエラスチカワンギーソン染色(elastica van Gieson stain;EVG染色)では,膠原線維を選択的に赤色に染め,細胞質をピクリン酸により黄色に染め出す.これに対してマッソントリクローム染色(Masson-trichrome stain)では,ポンソーキシリジン,酸フクシンの混合液として細胞質を赤色調に,膠原線維をアニリン青により青色に染め出す(図1,2).

 これらの染色は複数の酸性色素を組み合わせて用いられ,いわゆるポリクローム染色に属する.ほかに身近なポリクローム染色法として細胞診で用いられるパパニコロウ染色(Papanicolaou stain)がある.

 本稿では,同じ酸性色素を使用して,どうして染色態度が違うのか,その理由について色素の性質,膠原線維の化学,そして各染色法の原理の立場から述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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