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ラボクイズ
1月号の解答と解説
著者: 伊瀬恵子1
所属機関: 1千葉大学医学部附属病院検査部
ページ範囲:P.125 - P.125
文献購入ページに移動解説:老化赤血球に由来する非抱合型ビリルビンは,血液中ではアルブミンと結合して肝細胞に取り込まれグルクロン酸抱合を受けて抱合型ビリルビンとなり胆管へ排泄される.腎糸球体では,非抱合型ビリルビンおよびアルブミンと共有結合しているビリルビンは基底膜を通過できないため,尿中には抱合型ビリルビンだけが認められる.本症例は,膵臓癌により胆道系に閉塞が起こり,ビリルビンが腸管に排泄されず血中に逆流し,腎臓を経て尿中に排泄されたと思われる.
問題1に示したビリルビン結晶は,黄褐色の針状で酸性~中性の尿で出現し,KOH,クロロホルム,アセトンで溶解するので確認に利用する.尿の外観は,黄色~黄褐色を呈しており,尿中ビリルビンが陽性であることが多い.また,類似した薬剤結晶(ダンスロン,トスキサシン)の鑑別のため化学的性状に注意し,ビリルビン定性検査であるロジン(Rosin)のヨードチンキ法などで確認する必要がある.尿沈渣の特徴としてビリルビン色素で黄染された細胞を多く認める.ステルンハイマー〔Sternheimer(S)〕染色法ではビリルビン色素の黄色が重なるため通常の染色態度と異なるので注意する必要がある.
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