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検査じょうほう室 生化学:おさえておきたい生化学の知識
胚細胞腫と髄液中胎盤型アルカリホスファターゼ(PLAP)
著者: 渡辺伸一郎1 菊野晃1 久保長生2 菰田二一3 佐藤豊二4
所属機関: 1東京女子医科大学中央検査部 2東京女子医科大学脳神経外科 3埼玉医科大学第一生化学 4新潟県立がんセンター検査室
ページ範囲:P.260 - P.262
文献購入ページに移動胚細胞性腫瘍(germ cell tumor)は胎生期に出現する原始胚細胞が成熟し,胚細胞になるまでのある時期に発生すると考えられる腫瘍群で,性腺,後腹膜,縦隔あるいは頭蓋内に発生する.
頭蓋内胚細胞性腫瘍は,松果体部,トルコ鞍上部や基底核部に好発し,化学・放射線療法に感受性の高い胚細胞腫(germinoma)と感受性の低い非胚細胞腫(non-germinomatous germ cell tumor)の2つに大別され,非胚細胞腫には胎児性癌(embryonal carcinoma),卵黄囊腫瘍(yolk sac tumor),絨毛癌(choriocarcinoma),奇形腫(teratoma)およびこれらの混合性腫瘍(mixed tumor)が含まれる.
胚細胞腫は化学・放射線療法に著効を示し,化学・放射線併用療法の10年生存率は90%以上で,外科的手術を必要としない.胚細胞腫の確定診断には髄液細胞診や手術時の摘出標本の病理組織検査が主として用いられてきたが,患者に対する侵襲も大きい.
胎盤型アルカリホスファターゼ(placental alkaline phosphatase;PLAP)は耐熱性で,L-フェニールアラニンにより阻害を受けるアルカリホスファターゼ(ALP)・アイソザイムの1つで,Regan isozymeなど種々の腫瘍においてPLAPと酵素学的にも免疫学的にも区別のできないALPが産生されていることが古くから知られている.また,PLAPが頭蓋内胚細胞腫の腫瘍マーカーとして有用との報告も認められる1,2)が,未だその測定はルーチン化されていない.
PLAPを腫瘍マーカーとして,頭蓋内胚細胞腫の術前診断ができれば,手術を行わずに化学・放射線療法を第一選択とすることができるため,その臨床的意義は高いと考えられる.
最近,筆者らは頭蓋内胚細胞腫の腫瘍マーカーとしてモノクローナル抗体を用いた特異性の高い髄液中PLAP測定用のEIA(enzyme immunoassay,酸素免疫測定法)を開発し3),若干の知見を得たので報告する.
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