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絵で見る免疫学 基礎編 42
血液型抗原(5)―赤血球の凝集反応とその条件
著者: 高木淳1 玉井一2
所属機関: 1アボットジャパン(株)器機診断薬事業部 2栄光病院
ページ範囲:P.500 - P.501
文献購入ページに移動輸血する前に施行される適合試験には赤血球の凝集反応が用いられる.赤血球の表面で抗原抗体反応が起こることを感作といい,凝集とは結合した抗体が近接する赤血球上に存在する同じ抗原にも結合して抗原抗体結合物の集団を作ることである(図1).
1. 赤血球の陽イオンバリア
赤血球はその膜上に多く存在するシアル酸のカルボキシル基によって生理食塩液中ではマイナスに帯電している.生理食塩液中のNaClは解離してNa+とCl-になっており,陽イオンは赤血球の陰イオンに引かれて,赤血球表面に集まり密度の高い陽イオンのバリアを形成している.この陽イオンのバリアをゼータ電位(ζ-potential)という.赤血球同士が近づくと陽イオンのバリア同士が反発し合い,一定の距離(35nm)以内に近づくことができない(図2).凝集を起こすイムノグロブリンクラスは,IgA,IgGとIgMである.IgGは分子量が小さく,2つのFabが最大に開いても25nmなので,バリアを突破することができないため凝集が起こりにくい.IgMの直径は約35nmなので陽イオンのバリアを突破でき,10~12個のFabを持つので近接する赤血球と結合して容易に凝集を起こす(図3).一度抗体が赤血球に結合すると,陽イオンのバリアが小さくなり,赤血球同士が近づき引き続き感作および凝集は促進する.
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