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文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻6号

2003年06月発行

文献概要

Laboratory Practice 病理:細胞像からここまでわかる

乳腺(7) 乳管内乳頭腫

著者: 都竹正文1 秋山太2

所属機関: 1癌研究会附属病院細胞診断部 2癌研究会研究所病理部

ページ範囲:P.509 - P.512

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 概念および臨床的事項

 乳管内乳頭腫(intraductal papilloma;IDP)は乳腺発生の代表的な良性腫瘍である.この腫瘍は拡張した乳管壁から血管結合組織より成る茎が突出して樹枝状に伸び,その表面が筋上皮細胞と上皮細胞との2層構造でおおわれた乳管内の増殖性病変である.乳頭に近い大きい乳管に見られる病変はしばしば嚢胞状に拡張するので嚢胞内乳頭腫(intracystic papilloma;ICP)と呼ばれる.したがって,嚢胞内乳頭腫は基本的には乳管内乳頭腫の変化したものである.通常,単発性で血性分泌物や腫瘤触知を主訴とする.肉眼的に観察されるような大きさの乳管内乳頭腫は孤立性乳頭腫とも呼ばれている.一方,末梢の小葉間乳管に至るまでの小乳管にしばしばみられる末梢乳管の乳頭腫は,小さく顕微鏡的に観察され,多発性乳頭腫(multiple papilloma)としてみられることが多い.このように末梢部にみられる乳頭腫は癌に合併してみられたり,上皮過形成(epithelial hyperplasia)を伴うことが多く,通常は乳腺症あるいは線維嚢胞症として腫瘤を形成する病変群の1つの所見として観察されることが多い.しかし,これらの病変のうちで,血管結合織性の茎を持たない乳管上皮の過形成は乳管乳頭腫症(duct papillomatosis)と呼ばれ乳管内乳頭腫と混同されやすいが,両者は明確に区別するべきである.

 大きな乳管,特に乳頭直下の乳管内乳頭腫は2~3mmから2~3cmの大きさになるが,腫瘍の大小にかかわらず,乳頭血性分泌物を主訴とする.大きな乳管内乳頭腫や嚢胞内乳頭腫は乳腺内腫瘤として触知されることも多いが超音波検査で発見されることもある.治療としては,これらの大きな孤立性乳頭腫は腫瘤切除が行われる.発生年齢は40~50歳の中年にみられるが,高齢者の場合,上皮過形成や癌を合併することが多いといわれている.特に,末梢乳管に発生する多発性乳管内乳頭腫は癌発生のリスク病変としての報告がみられ,これらは異型を伴う上皮過形成と合併することが多いことから前癌性病変としてとらえ,注意深く経過観察する必要がある.一般に乳管内乳頭腫と癌の関係については,大きな乳管で孤立性のものより,末梢乳管で多発するもののほうが癌化の危険性が高いと考えられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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