文献詳細
復習のページ
医療人-患者関係ことはじめ
著者: 中尾克枝1 小谷和彦2 安木義博1
所属機関: 1鳥取赤十字病院中央検査室 2鳥取大学医学部臨床検査医学
ページ範囲:P.534 - P.535
文献概要
「緊張しないでリラックスしていてください」,「息を止めてください」,「思いっきり息を吐いてください」,「どうですか,苦しくないですか」などと患者さんに問いかけながら生理機能検査は日々進みます.時には,そんな検査用のお約束言葉のやりとりばかりではなく,思わず会話が弾むことだってあります.その内容は,病棟でのできごとや医療に関わらない社会的話題,そして家族の話であったりします.検査を反復する患者さんとは顔見知りになり,病状も気になってくるものです.患者さんとの協同なくして検査結果がうまく得られないことだってあります.このように,生理機能検査では患者さんと接する機会が多く,患者さんとともに泣いて笑ってという場面もある世界です.
学生時代に実習した生理検査の現場がそれゆえに楽しそうで,生理検査部門への就業を志願した人もいるかもしれません.生理検査部門での活躍を夢見て,学生時代から患者さんと会話するシミュレーションを余念なくやってきた若人もいることでしょう.そうはいいながらも,就職して初めて生理検査を実施してみて,患者さんに接すること自体が,正直,“怖い”と感じたような経験はありませんか? ポータブル心電図をとり終えて,病室を出るとき,付き添いの家人に「どうかお大事に」といった矢先に当の患者さんが亡くなられたと聴き,かけた一言が無意味に思えてくるような体験もそのうち出てくるに違いありません.初学時には,思わず,生理検査の現場で繰りひろげられる人間的なドラマに臆してしまうといったことになりがちです.
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