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文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻8号

2003年08月発行

検査データを考える

新生児医療における臨床検査の使いかた

著者: 杉浦正俊1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系小児内科

ページ範囲:P.731 - P.737

文献概要

はじめに

 「こどもは社会の宝である」という意識が高まってきたこともあって,テレビの ‘特番' などを通じて新生児医療になじみをもたれている方も多くなっている.しかし対象とする患者も疾患も,成人とは大きく異なるため,まだまだ特殊な部分も少なくない.そこでまず最初に新生児医療そのものについて概説する.

 生後28日までの乳児を新生児と呼ぶが,これら新生児が診断や治療の対象となり始めたのはごく最近といわれている.欧米においても19世紀末まで,未熟児や病気を持って生まれた児は医療の対象とされず,生き延びたものだけが社会に受け入れられ,庇護を受けることが許されていたという.わが国においても新生児医療の歴史の始まりは第二次世界大戦後,わずか50余年前といわれている.

 石塚ら1) は新生児医療施設の規模ごとに新生児の生存率を調べ,体重1,500g以上の新生児の死亡率は施設間の差がないのに対して,体重1,000g未満の新生児(超低出生体重児)は施設により死亡率が大幅に異なること(約18%および約60%)を報告した.また新生児搬送(出生後に未熟児を専門病院に転送)と母体搬送(出生する前に母親ごと専門病院に転送)では,未熟児の生存率が大幅に異なることも明らかとなった.このため新生児医療は専門施設に集約し,そこに母体搬送を行う必要性が認識され,厚生労働省は2000年度より周産期医療対策事業(エンゼルプラン)を開始した.その骨子は人口100万人に対して1か所,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)と母体胎児集中治療室(maternal and fetal intensive care unit;MFICU)を備えた総合周産期母子医療センターを整備することで,そこでは新生児を専門に診療するスタッフ(新生児科医や新生児専門看護師など)の常駐とともに,24時間緊急検査に対応することが要求されている.

 これらの先人たちの努力の結果,超低出生体重児の死亡率は図1のように急激に低下し,出生体重400g未満の生存例すら報告されるなど,日本の新生児医療は世界で最高水準といわれるに至っている2).その成績を支える臨床検査であるが,曜日時間帯を問わない緊急検査であること,微量検体であるなど検査室への負担は少なくない.しかし体重500gの超低出生体重児の場合,血液2mlは成人の献血にも匹敵する.また疾患の進行も極めて早い.そこで新生児特有な疾患の紹介もかねて,臨床検体検査が大切な疾患を中心に紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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