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文献詳細

雑誌文献

検査と技術31巻9号

2003年09月発行

文献概要

絵で見る免疫学 基礎編 45

自然免疫機構と獲得免疫機構の橋渡し(1)―TLR

著者: 高木淳1 玉井一2

所属機関: 1アボットジャパン㈱器機診断薬事業部 2栄光病院

ページ範囲:P.804 - P.805

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 生体は病原体(抗原)に対してまず非特異的な免疫応答が対応し,次いで特異的な免疫応答で防御する.非特異的な免疫応答にかかわるのは自然免疫系におけるマクロファージ,ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞,樹状細胞など抗原特異的なレセプターを持たない細胞である.特異的な免疫応答は獲得免疫系における抗原特異的なレセプターを有するT細胞とB細胞によって行われる.地球上には獲得免疫機構を持っていない多くの生物が存在し,彼らは自然免疫機構だけで病原体を認識して排除している.その機構は食細胞に存在する補体,レクチン,スカベンジャーレセプターを介する貪食作用,そして今回述べるTLR(Toll-like receptor,Toll様レセプター)である.

TLR

 ハエは生物が腐敗して微生物が繁殖している場所を好んで生息しわれわれから忌み嫌われている.しかし,このハエにもTollと呼ばれるレセプターが存在し,感染防御をしている.すなわち,ハエは細菌など微生物表面の特異的な分子をTollと呼ばれるレセプターで感知し,抗菌ペプチドを産生し微生物を排除する.最近,ヒトの細胞にもToll様レセプター,すなわちTLRが発見され,Tollと同様に病原微生物に存在する特異的な分子構造を識別する.TLRは,ヒトの多くの細胞,マクロファージ,樹状細胞やT細胞,B細胞などの免疫細胞表面や細胞質内のファゴゾーム(食胞)に存在し,現在10種類のTLRの存在が確認されている.TLRは膜貫通型のレセプターで病原体由来の分子を認識すると細胞質内の多くの物質を経て核に伝達される.種々のサイトカインを発現し,食細胞には細菌のオプソニン化を促すほか,補体系にも活性化を促し,自然免疫系を活性化させて,感染防御機構を誘導する.また,免疫系細胞には活性化に必要なTNF(tumor necrosis factor,腫瘍懐死因子)-α,IL(interleukin)-6,IL-12などの炎症性サイトカインの分泌を促し,獲得免疫系の促進を促す.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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