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病気のはなし
肝性脳症
著者: 新敷吉成1 渡辺明治1
所属機関: 1富山医科薬科大学医学部第3内科
ページ範囲:P.96 - P.101
文献購入ページに移動肝性脳症は急性肝疾患(劇症肝炎など)にみられるものと,慢性肝疾患(肝硬変など)にみられるものとがあり,それぞれ病態が異なる.劇症肝炎では肝実質の広範な壊死により肝機能が著しく低下するため起こるが(壊死型という),肝硬変では腸管内で生じるアンモニアなどの神経毒作用物が血液中に吸収され,肝で解毒されることなく,門脈-体循環短絡路(porto-systemic shunt)を通って大循環系に流入し,血液脳関門を介して脳内に達する(シャント型という).肝硬変では両方の機序が混在していることが多いが,門脈-大循環短絡路が高度に発達した症例では高頻度に肝性脳症がみられる.径が10mm以上に拡張した短絡路は肝性脳症の発現頻度と密接に関連する1).肝硬変の約10%にこのような太い短絡路がみられる(図1).
肝性脳症発現の分子機序としてはアンモニアは確実な起因物質と考えられている.他に中分子量物質仮説やγ-アミノ酪酸(gamma aminobulyric acid,GABA)-ベンゾジアゼピン仮説などがあるが十分に解明されていない.
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