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文献詳細

雑誌文献

検査と技術32巻3号

2004年03月発行

文献概要

病気のはなし

急性骨髄性白血病

著者: 岸慎治1 上田孝典1

所属機関: 1福井大学医学部附属病院第一内科

ページ範囲:P.216 - P.220

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病 因

 大半の症例では,急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia,AML)の病因は不明であるが,ある種の状況下ではAMLの頻度が増加する.ファンコニー症候群(Fanconi syndrome),ダウン症候群(Down syndrome),ブルーム症候群(Bloom syndrome),毛細血管拡張性運動失調症,重症複合免疫不全などの遺伝的疾患では,AMLが発症しやすい.AMLの発生に最も関連した明らかな病因は高線量放射線の被曝である.その他の発がん物質や低線量被曝,電磁波,喫煙については直接的な原因としての証明はなされていない.化学物質では,ベンゼンの大量曝露が病因となる.他の化学物質については因果関係は不明である.また治療関連白血病(二次性白血病)として抗がん剤および放射線治療の後に発症することも知られており,AMLでの長期生存例増加とともに,注目されている.

 AMLは他の多くのがんと同様に,多段階の遺伝子の異常で発症すると考えられている一方で,その発症に関与する特異的な染色体の転座や欠失がいくつか存在する.近年の分子遺伝学の発展により,再構成の切断点から数多くの腫瘍関連遺伝子が単離され,これら再構成遺伝子による分子生物学的な異常も解明されつつある.AMLでみられる染色体異常と再構成遺伝子の代表的なものとして急性前骨髄球性白血病におけるt(15;17)転座にみられる,15番のPML遺伝子と17番のRARα(レチノイン酸受容体α鎖)遺伝子が融合したPML-RARαキメラ遺伝子がある.産生されるキメラ蛋白は脱アセチル化の阻害により,細胞の転写・分化を阻害し,急性前骨髄球性白血病が発症すると考えられている.ほかに分化型急性骨髄性白血病におけるt(8;21)転座にみられる,8番のETO遺伝子と21番のAML1遺伝子が融合したキメラ遺伝子,好酸球増多を伴う急性骨髄単球性白血病におけるinv(16)と,t(16;16)にみられるCBFβ遺伝子とMYH11遺伝子が融合したキメラ遺伝子などが知られている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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