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ラボクイズ
4月号の解答と解説
著者: 大家辰彦1 犀川哲典1
所属機関: 1大分大学医学部臨床検査医学教室
ページ範囲:P.431 - P.431
文献購入ページに移動解説:ペースメーカーのモードはアルファベットの大文字3文字で表示される(表).第一文字はペーシング部位を,第二文字はセンシング部位を示し,Vは心室を,Aは心房を,Dは両室を表す.第三文字は応答形式を示し,Iは抑制型を,Tは同期型を,Dは両者を表す.原理的にはすべてのモードの組み合わせが設定可能であるが,一般的に用いられるモードは質問で示した5種類のモードである.
症例の心電図ではQRS波の前にのみペーシングスパイクが認められる.このことより心室に電極が留置されていることは判断できる.しかしペーシングスパイクはすべて先行するP波より一定間隔の後に出現している.このことよりペースメーカーは心房興奮から独立して心室をペーシングしているのではなく,心房興奮を感知(センシング)して,そこから決められた心房-心室間隔の後に心室をペーシングしていることになる(同期).このようなペーシング様式を可能とするには心房電位を感知する電極,および心室をペーシングする電極の両方が必要である.心電図より判断される本例のペーシング形式はVATである.しかし心室ペーシングをセンシングせずに行うと,固定ペーシングとなりR on Tから心室頻拍を誘発する可能性があるため,手術時の電気メス使用時のセンシング不全を予防する場合などの特殊な状況を除いて行われない.また上記と同様の理由などより自己波が出現した場合ペースメーカーからの刺激を抑制する必要があることより,本例のペーシングモードはDDD,もしくはVDDと判断される.
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