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絵で見る免疫学 基礎編(54)
宿主とウイルスの攻防(2) HIVと逆転写酵素
著者: 高木淳1 玉井一2
所属機関: 1アボットジャパン(株)器機診断薬事業部 2栄光病院
ページ範囲:P.510 - P.511
文献購入ページに移動HIVの感染と増殖
HIVは図2に示すようにエンベロープを持ったRNAウイルスである.ビリオン(ウイルス粒子)は2本のRNA遺伝子と逆転写酵素,インテグラーゼとプロテアーゼの3個の酵素を持っている.HIVはエンベロープに存在する糖蛋白gp120とgp41を介して宿主の細胞に侵入する(gp,glycoprotein).gp120は4CD+T細胞のCD4分子に高い親和性で結合する.マクロファージにはCD4分子が若干発現しているので同様に侵入する.HIVはケモカインCXCR4をT細胞のケモカインレセプターと結合する(マクロファージはCCR5を発現している).この2つの結合の後,gp41がHIVのエンベロープとT細胞膜との融合を引き起こして侵入する.侵入後まず,逆転写酵素によってウイルスRNAを相補的DNA(complementaly DNA,cDNA)に転写し次いで二本鎖cDNAとする.次に,組み込み酵素であるインテグラーゼで,ウイルスcDNAは宿主のDNAに組み込まれる.組み込まれたcDNAをプロウイルスと呼ぶ.ウイルスの複製は宿主側のRNAポリメラーゼによってプロウイルスからウイルスRNAの転写で開始される.この転写物は,ウイルス蛋白質のmRNAとなるために種々のスプライシングを受けたのち宿主のリボソームでウイルスの構造蛋白質や3個の酵素を産生する.スプライシングを受けないRNAは新たなウイルスのゲノムになり,酵素と共に構造蛋白質に包み込まれて新たなビリオンが形成される(図3).日本人にはみられないが,白人の約1%にCCR5変異体のホモ接合体を持つ人が存在してHIV感染に抵抗性を示す.CCR5のヘテロ接合体の欠損は,HIV感染をある程度防御したり病気の進行を緩やかにしうる.
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