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検査データを考える
一過性に認められる高アルカリホスファターゼ血症
著者: 星野忠1
所属機関: 1日本大学医学部臨床検査医学
ページ範囲:P.643 - P.647
文献購入ページに移動血清アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase,ALP;EC3.1.3.1)活性は,骨疾患,肝胆道系疾患などで上昇することが知られているが,年齢,性別,血液型の違いにより活性値が異なるので活性値上昇の判定には注意が必要である.特に,小児期は骨の成長とともに骨型ALP(ALP3)活性が上昇するため,1歳から思春期までは成人の3~4倍,思春期のピークでは約4~6倍にも達する1).しかし,時に成人基準値上限の30倍にも達する原因不明の異常高値例を経験することがある.そしてこれらの症例のほとんどが乳幼児であり,ALP活性の上昇が一過性であることに注目したPosenら2)は,これらの症例を1つの症候群としてとらえ,乳児期における一過性の高ALP血症(transient hyperphosphatasemia of infancy,THI)という概念を提唱した.その後,この現象は乳幼児以外でも観察され,現在ではより広い概念としてtransient hyperphosphatasemia(TH)と呼ばれている3).
本稿では検査側から臨床医に対してTHの可能性があることを報告できるための検査法について,われわれが経験したTH症例4)を紹介する中で解説したい.
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