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文献詳細

雑誌文献

検査と技術32巻8号

2004年08月発行

文献概要

けんさアラカルト

抗体を用いた酸化LDLの測定法

著者: 益成利幸1 河野弘明1

所属機関: 1協和メデックス(株)研究開発部

ページ範囲:P.764 - P.765

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 はじめに

 酸化低比重リポ蛋白質(oxidized low density lipoprotein,酸化LDL)は,元の低比重リポ蛋白質(low density lipoprotein,LDL)とは異なり,スカベンジャー受容体のリガンドとして取り込まれ泡沫細胞を形成するほか,血管内皮細胞,血管平滑筋細胞を活性化するなどの性質を有することから,動脈壁内における酸化LDLの重要性が注目されている.一方,血液中に酸化LDL自己抗体が存在し,それが動脈硬化の進展と関連しているとの報告などから,血中酸化LDLと動脈硬化との関連が予測され,血中酸化LDLの簡便な測定法開発が望まれていた.

 しかし,アポリポ蛋白質,リン脂質,コレステロールなどの複合体であるLDLが酸化を受けるとさまざまな成分が過酸化され,蛋白質の架橋や開裂などが連続的に起こる.よって,酸化LDLは単一物質ではなく,極めて多様な物質であると考えられる.免疫学的手法によりLDL中の過酸化物を捉えれば酸化LDL測定も可能であるが,どのような過酸化物を測定対象とするかにより測定系の臨床的意義は異なると考えられる.

 板部らは動脈硬化巣を免疫原として,酸化LDLと特異的に反応するモノクローナル抗体DLH3を取得し,DLH3を用いてヒト動脈硬化病巣部を免疫組織化学的に染色すると,マクロファージ由来泡沫細胞が染色されることを明らかにした.また,板部らはDLH3のエピトープが,酸化ホスファチジルコリン(oxidized phosphatidylcholine,酸化PC)であることを明らかにした.酸化PCは酸化LDLが泡沫細胞の形成や血管内皮細胞の活性化などの動脈硬化促進的に作用するうえで重要な成分であることが示唆されている1)

 板部らは,DLH3と抗ヒトアポ蛋白質B(apolipoprotein-B,アポ-B)抗体などを組み合わせたELISA(enzyme-linked immunosorbent assay,酵素免疫測定法)を構築した2)が,一連の操作に時間がかかり多数検体の処理には限界があるなどの問題があった.酸化LDL測定試薬「MX」(研究用試薬)は,このような問題点を克服し,臨床現場で簡便に使用可能でかつ実用的な,DLH3と抗アポB抗体とによる酸化LDL測定キットである3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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