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ラボクイズ
7月号の解答と解説
著者: 升秀夫1
所属機関: 1国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科
ページ範囲:P.727 - P.727
文献購入ページに移動【問題1】 解答:(2)肝吸虫
解説:肝吸虫は肝臓ジストマと呼ばれていました.ジ・ストマは「二つの口」という意味です.1975年以前,日本各地の水郷地帯や河川流域に生息するニホンカワウソ,イタチ,テンなど野性動物,イヌ,ネコ,ブタなどの家畜,ヒトの胆管,胆嚢に寄生し,ヒトでは肝硬変を引き起こす重要な寄生虫病でした.近年,好適な終宿主であるニホンカワウソは絶滅し,水郷の干拓,河川護岸,農薬散布によって第一中間宿主のマメタニシも激減しました.第二中間宿主のモツゴ・モロコ・タナゴも絶滅した水域が多く,日本人の食生活も変化して淡水産の小魚を食べなくなったことから,国内での肝吸虫症はみられなくなりました.一方,東南アジア,中国南部は自然環境に恵まれ,第一中間宿主のマメタニシ類,第二中間宿主の淡水魚を食べる文化が守られています.このため肝吸虫に罹患したヒトやイヌ,ネコ,ブタならびにカワウソなど野性哺乳動物も数多く存在します.
現在,日本での肝吸虫寄生例は,これらの流行地からの外来者,流行地への旅行者などで散発的に認められる症例になりました.1950年代の霞ヶ浦・北浦湖岸住民の多くが,淡水魚の調理中に鱗に付着したメタセルカリアで真魚板(まないた)が汚染し,多数寄生による肝吸虫症例がありました.1970年以前の症例を調べると,腹部圧迫感や膨満感に始まり,食欲不振,不整便,下痢を起こし,やがて肝臓が腫張し肝肥大となり,貧血・黄疸,浮腫,腹水が見られる肝脾腫を伴う重篤な症状になったとする症例報告が多くあります.
解説:肝吸虫は肝臓ジストマと呼ばれていました.ジ・ストマは「二つの口」という意味です.1975年以前,日本各地の水郷地帯や河川流域に生息するニホンカワウソ,イタチ,テンなど野性動物,イヌ,ネコ,ブタなどの家畜,ヒトの胆管,胆嚢に寄生し,ヒトでは肝硬変を引き起こす重要な寄生虫病でした.近年,好適な終宿主であるニホンカワウソは絶滅し,水郷の干拓,河川護岸,農薬散布によって第一中間宿主のマメタニシも激減しました.第二中間宿主のモツゴ・モロコ・タナゴも絶滅した水域が多く,日本人の食生活も変化して淡水産の小魚を食べなくなったことから,国内での肝吸虫症はみられなくなりました.一方,東南アジア,中国南部は自然環境に恵まれ,第一中間宿主のマメタニシ類,第二中間宿主の淡水魚を食べる文化が守られています.このため肝吸虫に罹患したヒトやイヌ,ネコ,ブタならびにカワウソなど野性哺乳動物も数多く存在します.
現在,日本での肝吸虫寄生例は,これらの流行地からの外来者,流行地への旅行者などで散発的に認められる症例になりました.1950年代の霞ヶ浦・北浦湖岸住民の多くが,淡水魚の調理中に鱗に付着したメタセルカリアで真魚板(まないた)が汚染し,多数寄生による肝吸虫症例がありました.1970年以前の症例を調べると,腹部圧迫感や膨満感に始まり,食欲不振,不整便,下痢を起こし,やがて肝臓が腫張し肝肥大となり,貧血・黄疸,浮腫,腹水が見られる肝脾腫を伴う重篤な症状になったとする症例報告が多くあります.
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