文献詳細
文献概要
絵で見る免疫学 基礎編(57)
宿主とウイルスの攻防(4) ウイルスの逆襲 その2 HBVの変異(1)
著者: 高木淳1 玉井一2
所属機関: 1アボットジャパン(株)器機診断薬事業部・営業学術 2栄光病院
ページ範囲:P.818 - P.819
文献購入ページに移動B型肝炎ウイルス(HBV)
HBVは直径42nmの球形粒子で不完全な環状二本鎖DNAとDNAポリメラーゼ,逆転写酵素などを包む芯(コア,core)から成り立つDNAウイルスである(図1-a).HBVが細胞に侵入すると細胞質内でコア粒子が遊離し,コア粒子からDNAが放出(脱核)され,DNAは宿主の核内に移行する.次いで,ウイルスが持参したDNAポリメラーゼで完全二重鎖(covalentry closed circular DNA,cccDNA)を形成する.次いで,cccDNAからmRNAとpregenome RNAの転写がなされる.mRNAは宿主のリボソームを借用して表面蛋白質,コア,DNAポリメラーゼ/逆転写酵素などのHBVを構成する種々の蛋白質が合成される(図3).表面蛋白質は図1-bに示すS領域が支配しており,pre-S1および,pre-S2領域,S遺伝子から成り立っている.pre-S1,pre-S2は肝細胞への吸着に重要であり,S遺伝子が支配するS抗原(hepatitis B surface antigen,HBs抗原)はそのアミノ酸構成により4種類(adr,adw,ayr,ayw)のサブタイプを規定する.コア(hepatitis B core,HBc)蛋白質とe(hepatitis B e,HBe)抗原の産生は複雑である.リボソームがコア遺伝子の先端コドンから翻訳を始めた場合は183個のアミノ酸から成るコア蛋白質(HBc)が産生され細胞質にとどまる.しかし,precoreの開始コドンから翻訳を始めた場合,29個とコアの183個を含む計212個のアミノ酸から成る蛋白質が産生される.次いで,N末端,C末端が切断されて,149個のアミノ酸から成るe(HBe)抗原が産生され血中に放出される(図2).したがって,HBcと血中に放出されたHBeとのアミノ酸組成が一部重複していることを記憶願いたい.
掲載誌情報