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検査と技術32巻9号

2004年09月発行

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トピックス

ビタミンB1欠乏症とウェルニッケ症候群

著者: 森田嘉一1 橋詰直孝1

所属機関: 1東邦大学大橋病院臨床検査部

ページ範囲:P.869 - P.871

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 はじめに

 ビタミンは微量で動物の正常な生理的機能を調節し完全な新陳代謝を行わせ,それ自体としてはエネルギー源にもならず,生体構成成分にもならない物質である.ヒトにおける必須ビタミンは全部で13種類あり,脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分類される.これらのビタミンは生体内で合成されないか,合成されても必要量よりはるかに少ないので,食物,その他の形で外部より摂取しなければならない.ビタミン摂取量の不足はさまざまな欠乏症として現れる.

 ビタミンB1はthiamine(チアミン,または,サイアミン)と呼ばれ,最も早く発見されたビタミンの一つである.ビタミンB1の生理作用は,エネルギー生成系におけるα-ケト酸の脱炭酸反応と脂肪酸および核酸合成系でのトランスケトラーゼ反応での補酵素作用である.ビタミンB1分子はピリミジン環とチアゾール環がメチレン基でつながっている.生体内では遊離のthiamine,リン酸化されたチアミン一リン酸(thiamine monophosphate,TMP),チアミン二リン酸(thiamine diphosphate,TDP),チアミン三リン酸(thiamine triphosphate,TTP)の4型で存在する(図1)1).小腸で吸収された食餌性のビタミンB1は,肝臓でTDPとなり,生理活性を持つようになる.TDPはさらにリン酸化されTTPとなるが,その働きは十分に解明されていない.TDPとTTPが脱リン酸化されて生じたTMPは生理的に不活性である.組織中や赤血球にはこれら4型のすべてが存在するが,血漿中および髄液中にはthiamineとTMPだけが存在し,尿中にはthiamineとして排出される.

 ビタミンB1の測定にはHPLC(high-performancce liquid chromatography,高速液体クロマトグラフィー)法とチオクローム法があるが,最近ではHPLC法が標準法になっている2).しかし,どちらの測定法を用いても検体の前処理(溶血,除蛋白操作)が必要である.また,基準値が測定する施設によって異なる場合もある.全血総チアミン濃度のカットオフ値に対して,20ng/mlと28ng/mlの報告があるが,欠乏症例20例を含む77例の解析では28ng/mlで最も高い病態識別を得ている3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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