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ティンパノメトリーのポイントとなる波形は
著者: 西崎和則1 岡明子2
所属機関: 1岡山大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学 2岡山済生会総合病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.82 - P.84
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ティンパノメトリーはインピーダンスオージオメトリーの一つで,外耳道圧を変化させながらコンプライアンス(鼓膜面での音の伝わりやすさ)の変化を記録するもので,中耳伝音系,すなわち鼓膜および耳小骨連鎖の可動性を評価できる.検査によって得られたティンパノグラムを解析することにより,鼓膜および耳小骨連鎖の異常のみならず,中耳腔の液体貯留の有無,耳管機能を知ることが可能である.
ティンパノグラムは波形から以下のA,B,Cの3型に大きく分類され,A型はさらにピークの高さからAd(deep,ディープ)型,As(shallow,シャロウ)型に細分するのが一般的である(図1).ほかにB型やC型も細分することがある.
伝音難聴(中耳疾患)の鑑別診断のためにティンパノメトリーを行うが,理論上考えられる波形と一致しないことも多い.例えば,耳小骨連鎖離断8耳で理論上考えられるAd型を示したのは3耳,固着型22耳で理論上考えられるAs型を示したのは9耳しか存在しなかった1).その他,標準純音聴力検査の骨導値がシャドーであるか否かを判断するときにもティンパノメトリーを他の検査と組み合わせて用いる.例えば,ティンパノグラムがA型,耳鏡所見正常,アブミ骨筋反射が認められ,CT所見で異常なければ,骨導値がシャドーの可能性が高い.
このように,難聴の診断においてティンパノメトリーの結果は耳鏡検査,標準純音聴力検査,アブミ骨筋反射検査などの他の聴力検査やCTなどの画像所見と包括的に捉える必要がある.
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